「実質0円禁止」後も続く一括0円・実質0円販売、ガイドラインとその抜け穴

総務省は、2016年4月1日より「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)を適用、いわゆる「スマートフォンの実質0円販売の禁止」などの措置がとられ、携帯電話・スマートフォンなどの本体価格から、通信料金に対する割引を相殺して考えるいわゆる「実質価格」が0円以下となることが原則として禁止している。

ガイドラインの制定後、月額料金からの割引金額が減額されたほか、キャンペーンの終了などによって、ガイドラインに従って実質0円販売は終了となる動きが見られた。

さらに、直近では10月7日に総務省より携帯電話各社(ドコモ/KDDI/ソフトバンク)に対して、ガイドラインに沿わない割引が行われているという指導が行われた結果、端末購入時に使える割引クーポンなどが廃止・あるいは割引可能額が減額されるなどの動きがあるなど、ガイドラインによってスマートフォン購入時に適用できる割引が制限されている。
関連エントリ:KDDI、株主優待の端末割引クーポンを廃止、既存クーポンの割引減額または無効化の可能性あり | shimajiro@mobiler

そんな中でも「実質0円」どころか「一括0円」に近い価格でスマートフォンなどが販売されている事例が多数ある。

●ドコモの新機種「MONO」は「実質0円」より安い「一括0円」(ほぼ)
ガイドラインによって「実質0円」およびそれを下回る価格でのスマートフォン販売が無くなりつつある一方、ドコモは2016年冬モデルとして発売する新機種「MONO」の本体価格が一括648円(端末購入サポート適用後)となることを発表。

■ドコモ:MONOは端末購入サポート適用で648円
ドコモ:MONOは端末購入サポート適用で648円
※MONOの本体価格648円は「端末購入サポート」適用後の価格であり、割引前の販売価格は税込で32,400円。

MONOの販売価格は、ドコモオンラインショップにて確認可能。
MONO MO-01J – ドコモオンラインショップ

MONOの本体価格はほぼ「一括0円」に近い価格であり、いわゆる「実質0円」よりも安価な価格設定となっている。端末購入サポートを適用した状態とは言え、ガイドラインの適用後に新発売となる機種の一括価格が(発売時点から)1,000円を下回るのはMONO以外に例が無い。

一見するとガイドラインに違反しているようにも見えるMONOの端末価格は、MONO自体が廉価機種であることを理由にしてガイドラインの適用対象外となっている。

廉価機種(卸価格が3万円以下)の条件はガイドラインにも明記されており、MONOが不正を行った結果としてガイドライン適用を免れているわけではない。

スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン(PDF)

事業者が直接利用者に販売する場合における小売価格又は事業者が販売店に卸し売りする場合
における卸売価格が税抜 30,000 円以下の端末とする。ただし、当該小売価格又は卸売価格が調達費用を下回る場合には該当しない。

ガイドラインの適用を免れると明記されている条件を満たした上で、ある意味で堂々と「一括0円」に近い価格設定となっているMONOの価格設定について、総務省がガイドラインと照らし合わせて問題視しているのかどうかは不明。
→MONOの発表後に、ガイドラインの趣旨に沿わないなどの指摘があったことは報道されていないので、表だって問題視はしていないものと推測される。(ドコモとしても、おそらく念のため確認した上で発表を行っているものと予想)

●ドコモのタブレットはフツウに機種変更「実質マイナス2.2万円」
ガイドラインが対象としている機種はあくまでも「スマートフォン」であり、タブレットやモバイルWi-Fiルータに関してはガイドラインの対象外となっている。

このためか、ドコモではガイドライン対象外となるタブレット「dtab Compact d-02H」を端末購入サポート適用で本体代が一括約1万円、月々サポートが総額3.2万円適用されることで、実質価格がマイナス2.2万円にて販売を行っている。
※契約種別はMNP・新規契約・機種変更の全ての契約が対象となっている。

ドコモオンラインショップでのdtab Compact販売ページは以下。
dtab Compact d-02H – ドコモオンラインショップ

■dtab Compact d-02Hの本体価格&各種割引
本体価格:49,896円
端末購入サポート:▲39,528円
月々サポート:▲32,400円 (▲1,350円/月)
—————————————————–
実質価格:▲22,032円 ▲(918円/月)

前述のMONOと同様に、タブレット(およびモバイルWi-Fiルータ・フィーチャーフォン)についてはガイドラインによる規制対象外となっているため、ガイドライン制定後も積極的な割引の対象となっている模様。

●通信契約 + 自社で販売しない端末を割引するパターン
通信事業者による本体代の割引以外の例として、家電量販店などで行われている通信契約 + 自社販売以外の端末割引のパターンで「一括0円」に近い価格でスマートフォンを購入可能なケースがある。

具体例を挙げると、ヨドバシカメラではワイモバイルを新規契約(またはMNP契約)すると、SIMフリースマートフォン「ZenFone 3」が本体代42,980円→19,800円(税込)に割引している。

■ヨドバシカメラ:ワイモバイル新規契約でZenFone 3が本体代一括19,800円
ヨドバシカメラ:ワイモバイル新規契約でZenFone 3が本体代一括19,800円

同様に、Huawei P9 liteは本体代が一括1,111円となっており、ほぼ「一括0円」に近い価格設定。

■Huawei P9 liteは一括1,111円に
Huawei P9 liteは一括1,111円に

ヨドバシカメラに限らず、似たような販売手法は各家電量販店などで行われており、割引対象となる機種も上記で紹介している機種以外にも多数ある。

これもガイドラインで禁止されている「実質0円販売」に近いように思えるけれど、ガイドラインで禁止されているのは基本的に「端末購入を条件としての割引」であり家電量販店で行われているような、回線契約を条件とした本体代(通信事業者が販売しない機種)の割引を禁止することは明記されていない。

(3)端末購入補助
スマートフォンの購入を条件として事業者が利用者に対して提供する携帯電話の電気通信役務の料金又はスマートフォンの購入代金の割引 (当該電気通信役務と併せて提供される役務の料金や物品の購入代金の割引を含む。)及び金銭その他の物品又は役務の代価とすることができる経済上の利益並びに販売店によるスマートフォンの販売に応じて事業者が販売店に対して支払う金銭をいう。

一方でガイドラインには「MNPによる通信契約が条件となる場合はスマートフォンの購入が条件とするものと見なす」という趣旨の記載がある。

ただし、前述のワイモバイルの割引は新規契約またはMNP契約を条件とすることで、この点もクリアしているのかもしれない。
(率直に言うと、この辺りがokなのかどうかはよくわからない)

端末の購入を条件としない場合であっても、MNPによる通信契約の締結を条件とする場合(端末の購入を伴わないSIMのみの通信契約の締結を条件とする場合を除く。)については、スマートフォンの購入を条件とするものとみなす。

●MVNOは適用対象外:楽天モバイルでは端末代の大幅値引きを実施
ガイドラインは、通信事業者によるスマートフォンの購入補助の適正化することで、MVNOの新規参入・成長を促進することができると考えられている。

以下、ガイドラインより引用。

高額な割引等は、通信料金の高止まりの原因となるとの指摘があるとともに、端末購入を条件とした割引等を受けない利用者との公平性の観点や MVNO(電波の割当てを受けた事業者から無線ネットワークを借りてサービスを提供する事業者をい
う。)の新規参入・成長を阻害する点からも問題があると考えられる。

MVNOの新規参入および成長を促すという目的があるためか、ガイドラインでは今のところMVNOはガイドラインの対象とはしていない。
※ガイドラインに「対象外」と明記はされていないものの、MVNOについては「必要に応じて検討する」とされており、実質的には対象外となっている。

MVNOがガイドライン対象外となる旨については、総務省のガイドラインに対するコメントの中でその意向が読み取れる。

MNP割引や下取りもやり過ぎNG――総務省からガイドライン – ケータイ Watch

一方、UQコミュニケーションズや、ソフトバンク系列のWireless City Planning(WCP)といったモバイルブロードバンドサービスの企業が、MVNOとしてサービスを提供する場合はどうなるのか。総務省は「影響を注視して将来、必要に応じて検討したい」とするに留めた。

ガイドラインの対象外となっているMVNO各社は、MNPおよび新規契約者向けに端末代を大幅に割引するキャンペーンなどを展開。

直近で大規模なキャンペーンを展開しているのは楽天モバイルで、在庫整理的なキャンペーンではあるものの、SIMフリースマートフォンの旧モデルを中心に、本体代が一括で10,000円以下(通常は4万円台の機種などを含めて)となるキャンペーンを開催している。

【楽天モバイル】
楽天モバイル:ZenFone 2 Laser・ZenFone Goが7,600円、honor6 Plus・ZenFone 2が9,600円からのセール

●まとめ:「実質0円規制」は何のため?
総務省が定めたガイドラインは、2015年9月11日に安倍首相が「家計における携帯電話料金の軽減を検討すべき」とう発言が出発点となっており、そもそものスタート時の目的は家計における携帯電話料金を軽減する。という目的だった(ハズ)。

しかしながら、その後発足したタスクフォースによる議論や、それを経て制定されたガイドラインの結果、家計における携帯電話料金の軽減が減少するどころか、本体価格の値上げや冒頭で紹介したように各種割引クーポンの廃止、音声通話定額を軸としたプランへの転換に伴って特に大手通信事業者を契約している利用者では、家計における携帯電話料金が軽減されたことを実感している契約者はほとんどいないのではと思える。

そんなわけで、個人的にはガイドラインに沿わない割引を厳しく監視するよりも、家計における携帯電話負担の軽減に効果があったか、あるいは契約者が以前よりも納得・満足しているかを指標に、通信事業者・代理店(携帯電話販売店)・契約者が「三方良し」となるような制度作りを願いたいところ。