10月1日、SoftBankがイー・アクセスを買収&経営統合する事を発表した。
ケータイWatchの記者会見の記事は以下より。
ソフトバンク、イー・アクセスを買収 – ケータイ Watch
記者会見中に気になった内容などのメモ。
- イー・モバイル買収によりKDDIを抜いて契約者数第2位のグループに
- iPhone 5の登場がきっかけとなり買収を提案
- iPhone 5での容量制限を他社と同等水準に
- iPhone 5では2013年春頃からEMOBILE LTE(1.8GHz帯)を利用可能に
- 既存のEMOBILE LTEユーザにはメリットが無さそう
- iPhone 5でのテザリングを12月15日開始に前倒し
TCAの発表する2012年8月末の契約数は以下。
ソース:事業者別契約数(2012年08月末現在)|社団法人 電気通信事業者協会(TCA)
■2012年8月末の契約数 (契約数順)
(1)docomo:6,300万
(2)KDDI:3,589万
(3)SoftBank:3,014万
(4)WILLCOM:477万
(5)EMOBILE:420万
(6)UQ WiMAX:345万
(7)Wireless City Planning:26万
SoftBankがEMOBILEを買収する事で、
SoftBank(3,014万) + WILLCOM(477万) + EMOBILE(420万) = 3,911万
となり、契約者数でKDDIを抜いてグループ全体では2位になる。
ちなみに、8月末時点でのKDDI + UQを合算すると
KDDI(3,589万) + UQ WiMAX(345万) = 3,934万
となり、両社を合わせた契約件数は4,000万に近く、イー・モバイル合併後のSoftBankグループと契約数がかなり近い数字になる。
グループ毎の契約数をざっくりまとめると契約数は以下の計算。
■イー・モバイル買収後の契約数
docomo:6,300万
SoftBankグループ:4,000万
KDDIグループ:4,000万
※2012年8月末の契約数で計算
docomoが頭一つ抜けて、その後にSoftBankグループとKDDIグループがほぼ同数の契約数で競う形になる。
今回の買収のきっかけは、iPhone 5が対応しているLTEの周波数をイー・モバイルが所有している事で、iPhone 5で利用可能なネットワークを強化しようと考えたSoftBank側が積極的に提案した。
という経緯が会見で明らかにされているけれど、(現時点では)たった一つの端末のネットワーク強化が目的で、MVNOとしての提携などではなく、一気に買収にまで踏み込んでしまうのは、iPhone 5という端末の影響力の大きさ&SoftBankのiPhone 5に賭ける本気さと行動力がすごいなと、改めて認識した。
会見中の質疑応答でのやりとりを見ても、明確に『iPhone 5がきっかけになった』と言っているので、それが全てでは無いにしろ、iPhone 5は本当に影響力のある端末だと思うし、SoftBankとしてはテザリングの対応などなどでKDDIには負けてられない。という思いがあったのかなという事がうかがえる。
今回の買収に合わせて、iPhone 5での通信容量の制限を撤廃し、
『直近3日間で1GB以上利用した場合は通信速度制限』
という、他キャリアの水準に合わせると発表している。
ユーザとしては、通信速度の制限対象となる条件が各社共通化されたのは歓迎すべきだけれど、悩ましいのは速度制限対象の基準値が各社一律だとしても、実際に通信速度の規制対象になるのか、あるいは規制対象となった場合にどういった制限が発生するのかなどなどは、実際に使ってみないと解らないというところ。
もっと言ってしまうと、たとえ制限対象でなかったとしても『ネットワークが快適に使える』という保証も無いので『速度制限の基準が各社共通』という事がそのまま各社のネットワーク品質が同等であるという事では無いという点は気をつけたいところ。
SoftBankのiPhone 5が、EMOBILE LTEを利用可能になるタイミングは2013年の春頃。とされている。
冒頭のケータイWatchの記事から引用
なお、ソフトバンクでの1.7GHz帯の通信サービスは2013年春頃にスタートする予定。ソフトバンク側はイー・アクセスに対して900MHzと2.1Ghz帯のネットワークを提供する。
SoftBankの予定通りに対応が進めば、2013年春頃にはSoftBankのiPhone 5がEMOBILE LTEのネットワーク&エリアで利用出来るようになり、現時点でのEMOBILE LTEのエリアと速度を考えるとこのメリットは大きいと思う。
ただ、EMOBILE LTEが快適な理由には『利用者数が少ないから』という理由があったけれど、ここにiPhone 5ユーザのトラフィックが流れてくると、同じように快適なネットワークを維持できるかは不明確で、実際にどのぐらいの効果があるのかは対応が完了して実際に使ってみないと何とも言えないのが難しいところ。
EMOBILE LTEの契約数は7月末で38万件にとどまっている事もあり、現時点ではEMOBILE LTEはXiと比べて通信速度が快適な事が多いのだけれど、2013年春頃からはSoftBankのiPhone 5ユーザのトラフィックが、EMOBILE LTEの利用する1.8GHz帯に流れてくる予定になるので、利用者の増加によりこのタイミングで通信品質や速度が低下する事が予想される。
EMOBILE LTEの契約数は以下エントリにて。
EMOBILE LTE契約数は38万件/UE Category 4の導入時期は未定 | shimajiro@mobiler
会見中の質疑応答では『既存のイー・モバイルユーザにメリットがあるのか?』という趣旨の質問がされていたけれど、現状のEMOBILE LTEユーザとして納得出来る具体的な内容は無かったように思う。
仮に、EMOBILEユーザがSoftBankのネットワークを利用する事が可能になったとしても、それがユーザの望みであるようには思えず(少なくとも僕は望んでいない)、なんとなくSoftBankのiPhone 5を割引で購入(乗換)出来るような乗換キャンペーンでお茶を濁されるんじゃ無いかなと予想。(この予想は、外れるといいなぁ…)
EMOBILE LTEはXiと比べて面的なエリアが広く、通信速度も速い事が多かったので、今後も期待していたのだけれど、SoftBankのiPhone 5ユーザのトラフィック流入なんてことは予想外だった…(^ ^;
当初、2013年1月15日とアナウンスされていたiPhone 5のテザリング開始タイミングを1ヶ月前倒しして、2012年12月15日に一ヶ月前倒しする事をアナウンスしている。
2013年1月のタイミングでは、iPhone 5はEMOBILE LTEのネットワークへの接続は出来ていない状態になるので、今回の買収と合わせて発表するのはあくまでも『これからネットワークが強化される』というアピールではあると思うのだけれど、ユーザとしてはテザリングが利用可能になるタイミングが早まるのは嬉しいかなと。
自分自身はEMOBILE LTEのユーザなので、今回の買収は心情的には非常に残念。
ただ、イー・モバイルの経営や今後の各社との競争を考えると『潰れるよりはマシ』なのは事実だし、2013年春頃からはSoftBankのiPhone 5ユーザがEMOBILE LTEのネットワークを使えるようになる事でメリットを受けるユーザの方が数が多いことは理解しているけれど、3Gでは海外であまり使われていない周波数で苦労していたイー・モバイルが、LTEでは周波数の問題が解決して、端末調達などなどが容易になる事でこれからの発展を期待していた事もあるので、『これから』というタイミングで大手キャリアに買収されたというのは、イー・アクセスとしては良い時に売ったという見方も出来るけれど、単独で頑張って欲しかっただけにやっぱり少々寂しいなと。