11月4日に開催された決算発表で、ドコモの通信品質改善について質疑応答でコメントした。NTT島田社長の発言趣旨は以下の通り。
「全国の主要都市などでは、80%程度の場所で下り100Mbps以上のスループットが出る。」と、これまでの通信品質改善の効果を紹介しつつ、「トラフィックの伸びがあるので、新しい設備を入れながら本年度(25年度)と来年度(26年度)で徹底的に力を入れて品質を高めていく」と発言した。
ここで言う新しい設備は、25年2月からの「Dual Bnad対応MMU」や、端末側の送信電力を高めて通信品質を改善する「HPUE」(High Power User Equipment)で、NSA環境では25年6月から、SA環境では25年8月より導入している。また、Sub6対応のレピータは25年9月から導入している。ほかにも、5G基地局数の「構築数」を25年度上期→25年年度下期で3倍にするなど対策を強化している。
決算発表の質疑応答でのやりとりは、YouTubeの「石川 温のスマホ業界ニュース」チャンネルで確認できる。
ドコモの通信品質改善の動き(最近2年)
ドコモの通信品質低下が問題視されて以降、通信品質の改善に関するドコモの公式のコメントを時系列に整理すると以下。
2023年4月に開催した「5Gネットワーク戦略説明会」の中では、5Gサービスの未来へ向けた取り組みを紹介するイベントでありながらも、その質疑応答では通信品質低下に関するものに集中していた。このタイミングで、ドコモは通信速度低下の問題について「2023年夏までに解消する」とコメントしていた。
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瞬速5Gの基地局のエリアを容量がひっ迫している基地局までカバーするなどの調整のほか、収容する周波数を分散させる。とくに屋内では800MHzをつかみやすくなるため、ひっ迫するといったことがある。これをほかの周波数で通信させることでひっ迫度合いを軽減するほか、キャリアアグリゲーション(CA)のパラメーターの調整など、各基地局の状況を検討しながら対策を進める。同社では、2023年夏までにも問題の解消を図るとした。
2023年10月に行われた説明会は、より具体的に「ネットワーク品質改善の取り組みに関する説明会」とする説明会で、全国の約2000箇所以上を集中的に対策を行うエリアとして、その対策は2023年9月末で約70%完了、12月末までに90%を完了する計画を発表していた。
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ドコモの携帯電話ネットワークをめぐっては、主に都市部での品質が低下しているとの声が相次いでいる。同社では、コロナ禍が回復したことによる人流増との説明がなされていた。今後、全国2000カ所での対策は2023年12月までに90%以上を進め、鉄道動線における対策は同時期までに完了を目指す。
その後、2024年2月に行われた2023年度第3四半期決算では、2023年12月末までの対策によって通信品質が改善し、SNS上での通信サービスに対するネガティブな評価が2023年3月→12月で75%減少するなど、これまでの取り組みによる通信品質の効果をアピールしていた。
こうした改善への取り組みは、一定の効果があったものと思われるけれど、個人的に経験する範囲では「繁華街とは言えない、人が集まる場所でもない、新しい施設でもない場所で、予期せず通信品質が悪くなる」というケースが増えたので、それまで約20年ほどメイン回線として使っていたドコモ回線を23年秋に他社に転出した経緯がある。
通信品質の低下が長引く前までは、ドコモのサービスは、「dアカウント」まわりの認証の面倒くささや、サービスとしての細かい使い勝手には改善の余地が多いにあっても、4G LTEが全国エリアで利用できるようになった頃には「新幹線や高速道路などで高速移動中でも、一定以上の通信速度で安定した通信が利用できる」という面で極めて信頼していただけに、近年の通信品質低下は予想していなかった展開。
なお、ドコモは、「ドコモの通信改善 取組み宣言」として、2024年度より支社別に取り組んだ個別・具体的な内容を明かしている。
2025年度 ドコモの通信改善 取組み宣言 | 通信・エリア | NTTドコモ
一例を挙げると、首都圏では「2025年3月末までに山手線の主要駅を中心に設備増強し、Sub6の基地局数を1.2倍、特に利用の多い渋谷・新宿・池袋・東京駅の周辺エリアは設備容量を1.3倍以上に増強」など、かなり細かい内容が支社別に記載されている。なお、2024年度は「取り組み宣言」を全て達成しているとのこと。

もう少し遡ると、2021年春頃には5Gエリア端で通信速度が低下しやすい問題も発生していた。
