消費者庁は、プラスワン・マーケティングが提供するMVNOサービス「FREETEL」(フリーテル)がWebサイトに掲載していた「業界最速」などの内容が、景品表示法違反に該当するとして措置命令を発令した。
消費者庁の措置命令内容については、詳細がPDFにて確認できる。
プラスワン・マーケティング株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(PDF)
今回、消費者庁によって明らかにされた問題点は以下。
データ通信速度の「業界最速」は優良誤認
フリーテルは、MVNOサービス「FREETEL」の通信速を「業界最速」であるとアピールし、他社MVNOサービスと比べてデータ通信速度が高速であり、またMNOであるドコモに匹敵する速度で利用できるようにグラフ表示を行っていた。
これに対して、消費者庁は合理的な根拠を示す資料の提出を求めたものの、フリーテルより提された資料は合理的な根拠となるものではなかったとして「業界最速」は優良誤認表示であると判断された。
■「業界最速」をうたうフリーテル(消費者庁資料より)
なお、MVNOのデータ通信速度表示に関して、一部のMVNOのデータ通信速度が「スピードテストだけ速い」件については、2016年10月に開催されたIIJmio meetingでも、仮にそういった事業者が存在するのであれば、景品表示法違反にあたるのではないか。という懸念が示されていた。
IIJmio meetingでは、フリーテルのサービスが「スピードテストだけ速い」サービスであると一般のユーザから名指しがされたものの、プラスワン・マーケティングの増田社長は「スピードテストだけをはやくすることは絶対にない」とコメントしたことが明らかにされている。
FREETEL発表会で通信速度について確認してきた | 幽玄会社中山商店
発表会後にFREETELの増田代表取締役に確認したところ「他社さん同様チューニングはしているが、特定のアプリや通信内容で通信速度制限をするといったことはしていない」とのことです。また速度計測アプリだけ規制をせず、速く見せかけるようなことも絶対にないそうです。
フリーテルによる通信速度の優良誤認が直接のきっかけになったとは断言しがたいものの、総務省はデータ通信速度の「実効速度表示」をMVNOに対しても求める方針であることが明らかにしている。
MVNOも「実効通信速度」公開へ、総務省担当者が言及 – ケータイ Watch
消費者保護の取り組みの1つとして検討されているのが、MVNOの「実効通信速度」の開示だ。総務省では大手キャリア(MNO)に対し、共通の計測手法を用いた速度の開示を要請。これを受けてドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアは2016年1月から実効速度を公開している。
一方、MVNOはこの開示の対象外となっていた。内藤氏は、「MVNOの通信スピードは消費者の関心にもなっているので、どのように計測していくかを、今後総務省としても検討いきたい」と言及。
SIMカード販売数の「シェアNo.1」は優良誤認
フリーテルは、フリーテルのSIMカードが「シェアNo.1」であるとアピールしていた。
フリーテルの説明によると、「シェアNo.1」の根拠は、ヨドバシカメラにおける販売シェアであったとされるが、あたかもMVNO事業者の中で「シェアNo.1」であるように受け取れる内容について、消費者庁は「シェアNo.1」の表記が景品表示法上の優良誤認にあたると判断、これを修正するように命令した。
■「シェアNo.1」をうたうフリーテル(消費者庁資料より)
実際に、ヨドバシカメラ店頭でのMVNO各社の扱いを見ていると、ヨドバシカメラ店頭におけるフリーテルの扱いは他社よりも優遇されているように感じているので、「ヨドバシカメラ店頭でのシェアNo.1」は事実である可能性が高い。
■ヨドバシカメラ店頭でのフリーテルのブース
とは言え、特定の販売店で「シェアNo.1」であることはそれほど意味は無く、ヨドバシカメラ店頭においてフリーテルのシェアがNo.1となっているのは、一般消費者の支持による結果というよりも、単純にヨドバシカメラ側がフリーテルを猛プッシュしていることが理由と思う。
ヨドバシカメラ店頭でフリーテルが猛プッシュされる具体的な理由は明らかにされていないものの、フリーテルからヨドバシカメラへの販売奨励金の金額が他社よりも高い、あるいは両社の間に資本関係があるなどの可能性も考えられる。
ちなみに、ヨドバシカメラの公式オンラインストア「ヨドバシ.com」のSIMカードランキング(4月22日時点)を見てみると、フリーテルのSIMカードの中で最もランキング順位が高いのは(主に)訪日外国人向けのプリペイドSIMカードで、ランキング上の順位は10位。
■ヨドバシ.comでは10位が最高位
SNSアプリの「データ通信料無料」は有利誤認
フリーテルは「FREETEL SIM」サービスにおいて、Twitter・Facebook・Facebookメッセンジャー・Instagramなどの主要SNSを利用する際のデータ通信が無料であることをアピールしている。
ただし、これらのサービスを利用する際のデータ通信については、データ通信料無料の対象外となることが適切に表示されていないため、有利誤認にあたると判断された。
消費者庁の指摘を受けて、フリーテルのWebサイト内にも「上記アプリ内において、一部サービスについては無料の対象外となります。」という記載が追記された模様。
ただし、「各アプリの非課金対象範囲」へのリンクなどは設定されておらず、親切であるとは言い難い。
→この点は、同一ページ上に各アプリの非課金対象範囲が明記されることによって解決された。
■フリーテル「一部サービスは無料対象外」
掲載元:メッセンジャーアプリ(LINE、WhatsAp、WeChat) データ通信料0円サービス|FREETEL(フリーテル)
問題続出のフリーテルの今後は?
消費者庁からの措置命令が発令される少し前に、フリーテルは「スマートコミコミ+」および「とりかえ〜る」のサービス内容が、割高な本体代を支払うにも関わらず本体が購入ではなくレンタルに近い形での提供となっている点や、サービス提供にあたっての重要事項(端末返却が不要となるタイミング)を、適切な告知なしに修正を行っていた。
少し遡ると、2016年12月に発売したモバイルWi-Fiルータ「ARIA 2」では、通信事業者側の事情によって利用できない「UQ WiMAX」に対応していることをアピールしていたものの、この内容が誤りであったことを発売後に認め、購入者に対して返品・返金を行った。
わずか半年間の間に、本体が対応するサービス(ARIA 2問題)、料金プランの複雑さ・わかりにくさとコッソリ修正、Webサイト上の優良誤認・有利誤認と、フリーテルには多方面からツッコミが入っている。
フリーテルは、有名タレントを起用したTVCMの放映や、リアルショップ「FREETEL Shop」の展開など、MVNOサービスを一気に展開している反面で、これまでは目立つことの無かった(見落とされていた?)問題が噴出している。