滞在中のマラッカのバスの中で、偶然日本人の親子に出会った。
なんとなく、日本人っぽい格好と雰囲気があるのを見かけていて、話している言葉を聞いてお互いに『日本人なんです?』という話になって、話を聞いてみると、仕事を退職して年金生活中の父親と、その娘さんの二人で1年間かけて世界一周旅行中とのことだった。
親子は、その日の宿を探しに街へ移動するためにバスに乗っていたけれど、地図はバスターミナルで受け取った紙の地図を頼りに移動していたので、初めて訪れる土地では現在地が掴めず、バスをどこで降りるべきなのかも理解していなかった様子なので、手持ちのGALAXY Note 2でGoogleMapを表示して『目的のバス停までもう少しですねー』
というような話をしていたら『それ(GALAXY Note 2)は、ここでも使えるの???』とビックリした様子で聞かれたので『買ったのは日本ですけど、SIMロックが解除できるので、こっちでも使えますよ』と親子に説明してみた。
その時、娘さんが手にしていたのは、iPhone4か4Sだったけれど、日本のキャリアから購入したものだったので『こっちでは使えないから、回線を解約してWi-Fiで使っている』とのことだった。
親子は『1年間ぐらい旅をする予定』と聞いていたので『SIMフリーのスマートフォンがあると、何するにも便利ですよ』と、カンタンにSIMフリー端末が使えると便利であることを説明してみた。
この親子とはバス停で別れたので、一緒に過ごしていたのは10分少々だけれど『1年間かけて世界中を旅する』人がSIMフリーのケータイを持っていない。というのは、自分としては衝撃的だった。
というのも、現地情報に疎い海外『だからこそ』情報収集のためにスマートフォンやタブレットなどなどのツールが使えると心強く『海外滞在中にケータイが使える』というのは、滞在中のインフラとして極めて役に立つにも関わらず、出会った親子はSIMフリー端末を持っておらず、それ自体を批判するわけではないけれど、旅行のスタイルとしてはスマートフォンが登場する前の時代の旅をしていることが衝撃的だった。
海外に旅行/滞在する全ての人が、SIMフリー端末を使うことが正しい。とは思っていないし、敢えて『通信手段を持たない』という旅行をするのも、人によっては望むべく選択肢なんだろうけれど、出会った親子については『SIMフリーで使えないから、仕方なくWi-Fiで使っている』という消去法的にSIMロックされたiPhoneをWi-Fiで使っていることが理解できた。
もし、あの親子が持っているiPhoneがSIMフリーで現地SIMカードを利用することができていれば、きっとマップを見ながら移動することで道に迷ったり、不安に思ったりすることなく、使い方次第では旅のスタイルが大きく変えることができるのになー。と思うと、日本のキャリアから購入できるiPhoneがにSIMロックがかけられていることで『日本人が海外でiPhoneを使う』ことに対する大きな阻害要因になっている。ということを思わずにはいられない。
携帯電話事業者によるSIMロックには、携帯電話端末の割引分を通信料から回収する。というビジネスモデルにおいて有効ではあるし、それ自体を否定するつもりは無いけれど、日本のiPhoneについては、日本人に向けてはSIMロックがかけられた状態で販売されており、公式にSIMロックを解除する方法が無いため、マラッカで出会った日本人親子のように『海外ではWi-Fiで使う』という、iPhone本来の機能から考えるともったいない使い方をしている方が大半と思う。
一方で、日本人から下取したiPhoneのSIMロックを解除した上で海外に中古として販売する。という取り組みをキャリア自身が行っていることを踏まえて考えると、日本人相手にはSIMロックのかけられた状態で販売しているiPhoneを、日本人以外にはSIMロック解除した状態で販売している。というのはユーザとしては納得感がない。
SIMロックの解除について、ソフトバンクの孫社長は『端末代が40,000円高くなる』あるいは『SIMロック解除には需要が無い』という説明がたびたびされているけれど、どれも納得できる説明ではないし、一言で言うと『儲からなくなるからやらない』ということで良いと思うし、それ自体は営利企業の判断として何ら批判するものではないのだけれど『日本人が海外でiPhoneを使う際の利便性』を考えると『日本で販売されたiPhoneはSIMロックがかけられている』というのは、一言で言えば不便なことこの上ないものであり、端末価格そのものは海外で販売されているiPhoneと変わらないことを考えると、ユーザにとってはデメリットしかない。
※MNPだとiPhoneの本体価格が0円になる。というような話は事実ではあるけれどフツーのユーザがフツーに購入するケース。とは言い難いので、ここでは考慮しない。
国内で販売されているiPhoneについては『国内キャリア以外のSIMカードが利用できない』仕様となっている一方で、3G/LTE対応のiPad/iPad miniについては『日本で販売された端末でも、海外ではSIMフリーで使える』という仕様になっており、個人的にはこの仕様が『SIMロックをかけることによる通信料の担保』と『日本人が海外で利用する際の利便性』の両面で、ある程度バランスが取れた『落としどころ』なのではと思う。
そんなわけで、日本でiPhoneを販売しているKDDIとソフトバンクモバイルの両社については、是非とも『日本人が海外でiPhoneを利用する際の利便性』を考慮した上で、SIMロック解除について検討していただきたいなと。
あるいは、AppleがSIMフリー版のiPhoneの販売をする。という方向でも良いのですが。