iPhone 5s/5cが対応する、3社のLTEネットワークの現状と計画の比較。
iPhone 5s/5cが対応する3社のLTEネットワークの現状&計画の比較
キャリア |
2.1GHz帯 (Band 1) |
1.7GHz帯 (Band 3) |
プラチナバンド (800〜900MHz帯) |
---|---|---|---|
docomo |
■現在 32,000局 ※LTE全体で、下り最大75Mbps対応基地局数は28,000局 ■計画 |
■現在 試験運用中 ■計画 |
■現在 2,000局(認可数) ■計画 |
au |
■現在 25,000局 ⇒うち、31%以上の基地局は下り最大75Mbps以上に対応 ■計画 |
非対応 |
■現在 32,000局/実人口カバー率97% ⇒全国で下り最大75Mbps対応済み ■計画 |
SBM |
■現在 30,000局 ■計画 |
■現在 9,000局 ※9月時点で約40%が下り最大75Mbps対応済み ■計画 |
■現在 非提供 ■計画 |
以下、各キャリアネットワークの毎の考察。
- ドコモ:1.7GHz帯の展開が思ったよりもゆっくり
- au:実人口カバー率97%の800MHz帯をメインに展開/初速はかなり良さそう
- SoftBank:2.1GHz帯(Band 1)&1.7GHz帯(Band 3)で『倍速ダブルLTE』を開始/プラチナバンドでのLTEは2014年4月に前倒し
ドコモが提供するLTEのネットワークは、
(1)2.1GHz帯(Band 1) – 下り最大75Mbps
(2)1.7GHz帯(Band 3) – 下り最大150Mbps
(3)800MHz帯(Band 19) – 下り最大75Mbps
(4)1.5GHz帯(Band 21) – 下り最大112.5Mbps
の4つがあり、ドコモ版のiPhone 5s/5cでは(4)以外の3つのネットワークに対応している。
但し、現時点で商用サービスが提供されているのは(1)と(3)であり、10月より提供予定の1.7GHz帯(Band 3)のサービスについては、2013年度末までに500局の展開に留まる予定。
関連エントリ:Xiの1.7GHz対応基地局は2013年度末までに500局の予定 | shimajiro@mobiler
首都圏におけるXiは、2012年末から2013年はじめにかけて、下り最大37.5Mbpsエリアが順次下り最大75Mbpsエリアに拡大され、この時は『高速化』を実感することができた。
関連エントリ:山手線周辺でXiの下り最大75Mbpsエリアの拡大を確認! | shimajiro@mobiler
ただ、首都圏での75Mbpsエリアの拡大後もXiのユーザ数は増え続けており、最近の体感値としては、Band 1での75Mbps対応直後ほどの快適な速度が得られないようになった。(当然の流れではあるけれど…)
そんなわけで、Xiの高速化については、東名阪エリアで展開される予定となっている、下り最大150Mbpsに対応するBand 3の展開に期待していたけれど、Band 3に対応する基地局は2013年度末で500局と、意外にもゆっくりとした展開になる印象で、『多くのエリアで使える』という状況になるまでは、しばらく時間がかかりそう。
もう一つiPhone 5s/5cで対応する周波数として、800MHz帯(Band 19)があるけれど、こちらは都市部よりもどちらかと言えば郊外エリアでのXiエリア拡大に使われている印象で、今のところ首都圏で積極的に活用されている印象はあまり無いし、あったとしても基本は下り最大37.5Mbpsに留まっていることが多いように思う。
というわけで、基本的には下り最大75Mbps対応の2.1GHz帯(Band 1)を軸に、トラフィックの多い東名阪エリアで1.7GHz帯(Band 3)での下り最大150Mpbs(iPhone 5s/5cでは最大100Mbpsまでの対応)を提供し、地方では800MHz帯(Band 19)によるエリア拡大を行う。というのが、ドコモの基本的な方針になりそう。
個人的に面白いなーと思っているのは、ドコモのiPhone 5s/5cは、いわゆる『プラチナバンドLTE』に対応しているものの、ドコモはiPhone 5s/5cでの『プラチナバンドLTE』を特別にアピールはしておらず、この点は800MHz帯をメインにLTEネットワークを構築しているKDDIとの戦略の違いなのかなと。
KDDIが提供するLTEネットワークは以下の3つ。
(1)2.1GHz帯(Band 1) – 下り最大37.5Mbpsのエリアがメイン/75Mbps以上のエリアは約30%
(2)800MHz帯(Band 18) – 下り最大75Mbpsエリアを実人口カバー率97%で構築
(3)1.5GHz帯(Band 11) – 下り最大75mbps/対応エリアは他の2つに比べると狭め
auのiPhone 5では(1)のみの対応となっていたにも関わらず、(2)のネットワークを含めたエリアを対応エリアとして誤表示するなどがあった。
関連エントリ:auのiPhone 5が対応する『4G LTE』の広告内容について総務省が指導 | shimajiro@mobiler
iPhone 5s/5cでは、(1)と(2)のネットワークに対応しており、このうち(2)のLTEネットワークはいわゆる『プラチナバンド』でのLTEサービスとして、2.1GHz帯よりもエリアが広いだけでなく、通信速度も全域で下り最大75Mbps対応となっている点が、他社ネットワークと比べて、現時点では優位になっている。
auの800MHz帯のLTEが広いことは、郊外都市に行く度に実感していることで、通信速度についても全国で下り最大75Mbpsエリアに対応しているため、平均的に速度が速い。というのは間違いではないけれど、iPhone 5s/5c発売前までは、Android端末と一部のデータ通信端末だけが使用していたネットワークに、iPhone 5s/5cユーザが流れてくることによって、通信速度が低下することは避けられない。(これは当然、auに限った話ではないけれど)
通信の快適さを決定するのは基地局の数だけではないけれど、auの800MHz帯に対応した基地局は全国で32,000局となっており、基地局の数自体は、ドコモのXiにおけるメインバンドと言える2.1GHz(Band 1)の基地局数と変わらないので、auの800MHz帯のLTEは『基地局の密度が高い』とは言い難い。
800MHz帯のLTEは、面的な意味でのエリアは他社と比べてかなり広くなっている反面、iPhone 5s/5cを利用するユーザのトラフィック流入&1つの基地局が収容するユーザ数が多くなることでも、通信速度の低下が最も早く発生するのでは。というのが、auの800MHz帯に対する懸念。
一方で、auは2.1GHz帯(Band 1)の高速化を行うことも発表しており、現在は実人口カバー率で約30%に留まっている、下り最大75Mbps以上のエリアは今後徐々に拡大していくことが期待できるけれど、2.1GHz帯(Band 1)のLTEの速度高速化のためには、現在3Gユーザが利用している帯域を削る必要があるため、3GユーザがLTEに移行するのを見ながらの展開となり、どの程度のスピードで下り最大75Mbpsエリア化が進むのかは、ユーザとしては判断が難しいところ。
SoftBankが提供しているLTEサービスは以下。
(1)2.1GHz帯(Band 1) – 基地局数30,000/今年度内に全国で75Mbps対応予定
(2)1.7GHz帯(Band 3) – 基地局数9,000局/イー・モバイルのエリアを利用
(3)900MHz帯(Band 8) – 現在はLTEサービス提供なし/2014年4月よりサービス開始予定
iPhone 5s/5cについては、現時点では対応するLTEサービスの新規追加は無く、新しい周波数としては『プラチナバンド』によるLTEサービスを2014年4月より提供開始予定となっており、それまでは既存の2.1GHz帯(Band 1)&1.7GHz帯(Band 3)によるLTEサービスを展開する。
SoftBankは、従来は2.1GHz帯を利用した多くのエリアで下り最大37.5Mbpsに留まっていたけれど、下り最大75Mbps(ダブルLTE)対応への高速化を進めており、首都圏においてはiPhone 5s/5c販売に合わせて対応を完了しており、2013年度中に全国でダブルLTE対応をすすめる。とケータイWatchのインタビューにてコメントしている。
少々長くなるけれど、LTEの『倍速化』に関する内容を引用。
[キーパーソンインタビュー] 倍速化、900MHz帯は来春――ソフトバンク宮川氏が語るエリア品質 – ケータイ Watch
しかしソフトバンクでは、3G向けに使っていた電波を徐々にLTE用に切り替え、2.1GHz帯と1.7GHz帯の両方を5MHz幅 → 10MHz幅へ倍増。たとえば、この取り組みが早い段階で実施された大阪市内は、今年3月の段階で「iPhone 5」のスループットが6Mbps程度だったが、ダブルLTE、そして倍速化によって、15Mbps前後に伸びてきた。こうした傾向は名古屋、東京(池袋・新宿)でも同様とのこと。首都圏の工事終了は9月19日で、iPhone新機種発売日の20日には倍速化が完了する。全国では今年度中に実施される予定。
また、イー・アクセスを買収したことによって利用可能となった1.7GHz帯(Band 3)については、サービスエリアの大半が下り最大37.5Mbpsエリアであったけれど、2013年8月より順次、全国で下り最大75Mbpsに対応したサービスを開始することを予告(40%弱が対応済み)しており、これに伴ってイー・モバイルの提供する3Gサービスの通信速度は、下り最大42Mbps ⇒ 21Mbpsへと半減するなどの影響があった。
関連エントリ:EMOBILE LTEの下り最大75Mpbsエリアが8月以降に拡大!3Gサービスは下り最大42Mbps ⇒ 21Mbpsへ半減へ | shimajiro@mobiler
EMOBILE LTEの下り最大75Mbps対応は、9月時点でLTEエリアの40%弱が対応済み、2013年度末までにLTEエリアの全域が下り最大75Mbps対応となる予定であることが、イー・アクセスの発表によって明らかにされている。
2.1GHz帯(Band 1)の75Mbpsエリアの拡大と、1.7GHz帯(Band 3)の75Mbpsエリアを全国展開することを、SoftBankでは『倍速ダブルLTE』としてアピールしており、既存のiPhone 5ユーザも含めて、75Mbps対応エリアの拡大による通信速度改善は一定の効果がありそう。
但し、『プラチナバンド』でのLTE展開が最も遅くなるのはSoftBankで、現在は3G向けに利用している900MHz帯を、LTEで利用するのは2014年の4月の予定となっており、iPhone 5s/5cの発売から半年以上遅れてのサービス提供になり、これまでの間は2.1GHz帯(Band 1)と1.7GHz帯(Band 3)の75Mbpsエリア化&対応エリア拡大で勝負する形になる。
SoftBankが900MHz帯(Band 8)のLTEサービスをどの程度拡大していくのか?については、具体的な内容が発表されていないので何とも言えないけれど、『プラチナバンド』の特性である『電波が飛びやすくエリアを一気に広げやすい』という点を活かして、ある程度積極的に900MHz帯を使用していくのではと思う。
そんなわけで、だいぶ長くなってしまったけれど、初速としてはauのネットワークが優位である。という点は間違い無いと思うけれど、ユーザが増えた時の通信速度低下の影響がどの程度あるのか。という点は個人的にはやや不安を感じているところ。
その点、docomo&SoftBankのLTEサービスについては『新しい周波数帯の基地局増加&既存の周波数帯の高速化』という点で通信速度が高速化していくことが期待できるので、単純化すると『逃げるauを追う2社(docomo&SoftBank)』という構図になるのかなと予想。
iPhone 5s/5cについては、国内で初めて『大手3社からiPhoneが販売される』という状況になるけれど、各社が競争していくことで、利用者にとって使いやすい環境が整っていくことを願いたいなと。