総務省は、「モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン」の制定および「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」の改定と、各案に寄せられたパブリックコメントと、それに対する総務省の考え方を公表。
モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドラインおよび電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドラインに関するお知らせは以下にて。
総務省|モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン についての意見募集の結果
■ガイドライン改訂の概要
SIMロック関連:割賦払いは100日間経過、一括払いは支払確認後にロック解除可能に
「モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン」では、端末購入からSIMロック解除に必要な日数が現行ルールの180日間前後から日数が短縮される。
本体代を割賦払いする場合は100日程度以下に、また本体代を一括支払いする場合は「通信事業者が支払を確認するまで」がSIMロック解除に応じない期間として認められる。
このため、本体代を割賦支払する場合は端末購入からおよそ100日以上経過するとSIMロック解除が可能に、一括払いの場合は通信事業者側での支払確認ができれば、SIMロック解除が可能となり、現行ルールにおける「端末購入から180日が経過後」と比べて、割賦払いおよび一括支払いのどちらでもSIMロック解除が行えない期間が短縮される。
新ルールでは、本体代を一括支払い時は「支払確認まで」がSIMロック解除に応じないことが認められる期間となっており、この「支払が確認できるまで」が何日間なのかはあいまい。通信事業者や支払方法(クレジットカード・現金など)によって異なる可能性があるので、この点は通信事業者の詳細発表待ち。
SIMロックの解除期間が短縮 一括は「支払い確認後」、割賦は「約100日以下」に – ITmedia Mobile
一括払いの「支払いを確認できるまでの期間」という表現があいまいだが、これは「販売店で購入後、通信キャリアが一括払いで購入したことを確認するまでの期間」を意味する。従って、一括で購入して即日SIMロックを解除できるかは不明で、購入からロック解除までにタイムラグが発生する可能性がある。
SIMロック解除に関する新旧ルールの比較は以下にて。
項目 | 新ルール | 現行ルール | ||
---|---|---|---|---|
支払方法 | 割賦払い | 一括支払い | 割賦払い | 一括支払い |
適用時期 | 2017年8月1日以降 | 2017年12月1日 | 2015年5月1日 | |
SIMロック解除 非対応期間 |
100日程度以下 | 支払を確認できるまで |
端末購入から180日以内 ※ドコモは一部条件で即日SIMロック解除可 |
|
解約済端末 | 解約時にSIMロック解除の案内が行われる。 |
解約から一定期間、契約者本人のみSIMロック解除可 ※KDDIは契約者本人以外のSIMロック解除も受付可 |
ただし、新ルールの「適用時期」に関しては、やむを得ない事情がある場合に限って3カ月間を超えない期間に限って猶予が認められる。とされている。KDDIではシステム開発のスケジュールが上記の期限に間に合わない旨をパブリックコメントの意見として提出しており、総務省より数ヶ月間の猶予を得ている。
■KDDI:システム開発の都合によりガイドライン対応が2018年2月の可能性
通信サービス解約時にSIMロックの解除
通信サービスの解約時には「原則としてSIMロック解除に応じること」とされており、通信事業者がガイドラインに従う限り、通信サービスを解約と同時にSIMロック解除が行われる方針。
ただし、解約時のSIMロック解除手続に関しても、解約時以外にSIMロック解除を行うのと同様に、機種購入から指定の日数が経過していることが条件となる。また、解約時のSIMロック解除に関して手数料が無料化されるなどの記載はガイドラインには無いため、現行通り店頭でのSIMロック解除には手数料が発生する可能性が高く、通信サービスの解約に伴うSIMロック解除がどの程度普及するのかは未知数。
個人的には、通信サービスの解約時にSIMロック解除を行うだけでは不十分で、契約者がSIMロックを解除していなくても、正規に端末を(白ロムなどで)入手した第三者でもSIMロック解除が可能となるように対応を願いたいところ。
→現行ルールでは、KDDIのみが解約済み端末のSIMロック解除を、契約者以外(中古で端末を購入した者)でも可能。2015年5月1日以前に発売された機種については、ドコモでも同様にSIMロック解除が可能。
SIMロック関連:MVNO向けSIMロックを廃止
特にKDDIがMVNO向けに行っている、自社端末を自社ネットワークを貸出するMVNO向けのSIMカードで利用できなくする対応が禁止される。2017年8月1日以降に発売される機種が対象。このため、例年通り9月にiPhoneが発売されれば、タイミング的には次期iPhoneからMVNO向けSIMロックが認められなくなる。
例えば、KDDIが発売する機種を、そのMVNO(UQ mobileやmineo)と契約するSIMカードにて利用する際にSIMロック解除が不要となり、ドコモ端末をそのMVNOのSIMカードで利用できるのと同様に、SIMロックを解除することなくMVNO契約のSIMカードでサービスが利用できるようになる。
この点は、MVNO市場の初期の盛り上がりが「ドコモ端末にMVNOのSIMカードを入れて使える」という、既に購入済みの端末を変更することなく、通信サービスを乗り換えできる。という要素が大きく作用したことを考えれば歓迎したいところ。
ただし、従来はドコモのスマートフォンをそのMVNO契約のSIMカードで利用すると、テザリングが利用できないなどの制限があったほか、iPhone関連ではiOSのアップデートに伴ってMVNOのSIMカードでサービスが利用できなくなるなどの問題が発生しており、MVNO向けのSIMロック禁止が義務化された後も、同様の問題が発生する可能性がある。
mineoにて発生したiOSアップデートによるサービス利用不可の問題については以下にて。
まとめ:SIMロック解除が行いやすくなるのは歓迎、ただし…
各種ガイドラインによって改定されるSIMロック解除に関するルールを見ると、現行ガイドラインよりもSIMロック解除を短期間で行えたり、MVNOで利用時にSIMロック解除が不要になるなど、個別に見ればSIMロック解除が行いやすくなるものであり、基本的には歓迎。
ただし、SIMロック解除が行いやすくなるだけで、劇的に通信料金が下がったり競争環境が(消費者視点で)改善されるという可能性は低く、過度に期待すると期待ハズれになりかねないので、ガイドラインが適用される2017年8月1日および12月1日以降の動向を見守りたいところ。