「海外空港に到着したら、まずプリペイドSIMカードを買う。」
現地でのプリペイドSIMカード購入は、海外旅行好き、スマートフォンなどのガジェット好きに限らず、海外滞在中の通信費を抑えつつスマートフォン・タブレットなどでモバイルデータ通信を使うための手段として、非常にコストパフォーマンスが高い選択肢だった。
■国内外で販売されるプリペイドSIM
通信料金の安さという意味では「現地でプリペイドSIMカードを購入する」は引き続き有力な選択肢であることは変わらず、旅行中にSNSなどを更新する旅行者のニーズが大きくなる一方で、最近は「プリペイドSIMカードを購入する」旅行者を見かける機会が以前よりも減ってきたように思う。
以下の写真は、台湾の台北桃園空港のプリペイドSIMカードを販売する通信事業者カウンター。
■台北桃園空港(台湾)のプリペイドSIM販売カウンター(2014年)
2014年頃(上の写真)には、プリペイドSIMカードの購入待ちの行列を見かける機会が多々あったけれど、最近(2017年後半〜2018年現在)はプリペイドSIMカードの購入待ちで大行列。という光景を見かける機会が極めて少なくなった。
■台北桃園空港(台湾)のプリペイドSIM販売カウンター(2018年)
プリペイドSIMカードの購入行列を見かける機会が減ったのは、旅行者が海外でデータ通信を利用しなくなったから…ではなく、他の手段で通信手段を確保していることが理由と考えられる。
プリペイドSIMカードに代わる通信手段として思いつくのは、
(1)データローミングを使う
(2)モバイルWi-Fiルーターをレンタルする
(3)仮想SIM対応サービスを使う
の3つで、このうち増えている可能性が高いのは、データローミングとeSIM対応サービス。
安価になった国際データローミング
日本国内の事業者のデータローミングサービスでは、ドコモの「パケットパック海外オプション」や、KDDIの「世界データ定額」など、24時間/980円で使えるサービスが広まり、従来と比べて海外渡航時のローミングが割安に利用できるようになった。
国際ローミングサービスの料金が割安になったため、プリペイドSIMカードの購入に係る費用が大きいエリアに滞在する場合「プリペイドSIMカードを購入するより、国際ローミングサービスの方が割安」というケースもあり得る。
例えば、韓国では旅行者向けのプリペイドSIMカードの初期費用が割安と言えず、短期滞在であればプリペイドSIMカードを購入するよりも国際ローミングサービスを利用する方が割安になる。(おそらく、国際ローミングサービスの料金が値下がりする前は、モバイルWi-Fiルーターのレンタルが多かったと思う。)
■韓国内で購入できるプリペイドSIM「EG SIM」
このほか、海外の通信事業者が(基本的に自国の)旅行者向けに販売するプリペイドSIMカードも、国際ローミング向けの商品が充実している。
タイの通信事業者「AIS」が販売するプリペイドSIM「SIM2FLY」は、タイ人の渡航が多いエリアが割安。
「SIM2FLY」の399バーツ(約1,400円)のパッケージは、データ通信量4GB/有効期間8日間、アジアを中心とした17の国・エリアでデータ通信が利用できる。
「SIM2FLY」の商品説明は以下。
The ready-to-use SIM2Fly SIM Roaming
■「SIM2FLY」(399バーツパッケージ)対応エリア
日本、韓国、シンガポール、マレーシア、香港、ラオス、インド、台湾、マカオ、フィリピン、カンボジア、ミャンマー、オーストラリア、ネパール、インドネシア、カタール、スリランカ
「SIM2FLY」の対応エリアに含まれている台湾を滞在中には、空港のSIMカード販売カウンターで「SIM2FLY」を手にした(タイ人ではない)旅行客が、SIMスロットを開けるためのピンを借りるために、カウンターに寄る姿を目撃する機会があった。
スマホ内蔵型/ルーター型/SIM型で広がる仮想SIMサービス
もう一つ、海外でのプリペイドSIMカード購入を不要にしていると思われるのが、スマホ内蔵型/ルーター型/SIMカード型などの各種「仮想SIM」系サービス。
「仮想SIM」の実装別分類方法については、過去に開催された「IIJmio meeting 18」の資料が詳しい。
これらのサービスに共通しているポイントは以下。
・スマートフォン上のアプリからデータパッケージを購入する
・国際データローミングと比べて、パッケージ料金が割安
・プリペイドタイプが主力
「IIJmio meeting 18」で紹介されているように、中国で販売されるスマートフォンには、海外渡航者向けのデータ通信サービスとして、現地のデータ通信が割安に使えるサービスがプリインストールされており、スマートフォン上のアプリからカンタンにパッケージ購入が行える。
日本国内向けには、「仮想SIM」が内蔵されたスマートフォンは発売されていないものの、国内向けにも、モバイルWi-Fiルーターに内蔵する「クラウドSIM」によって渡航先の通信料が割安になるモバイルWi-Fiルーター「GlocalMe」等の商品がAmazonで販売されている。また、同機種をベースにカスタマイズした「Pocket WiFi 701UC」を通信事業者であるY!mobileが発売している。
Amazonにて販売される「GlocalMe G3」は以下。
Y!mobileの「Pocket WiFi 701UC」では、海外渡航時のデータ通信料が1日あたり90円(高速データ通信は毎月7GB)と、これまでの国際データローミングサービスと比べて圧倒的に安い。
SIMカード型のサービスとしては、専用アプリケーション上でデータパッケージを購入して使う「AIRSIM」などのサービスがある。
AIRSIMは国内の正規代理店からSIMカード単体が500円で購入できる。
AIRSIMのパッケージを購入すると、海外のデータ通信料が1日あたり1〜2ドル程度に抑えられるので、使い方次第では現地でプリペイドSIMカードを購入するよりも割安になるパターンも。
■AIRSIMパッケージ料金
「プリペイドSIM」にこだわらなくてもokに
個人的には、「プリペイドSIMを買う」のは経験としては楽しいし、現地での電話番号があると何かと便利なので、時間と予算がある限りはプリペイドSIMカードを購入するようにしているけれど、「海外でデータ通信を使う」という用途に関して言えば、プリペイドSIMカードを購入しなくても事足りるようになってきたケースが多い。
■世界各地で使えるプリペイドデータSIM「AIRSIM」
今回紹介した割安な国際ローミングサービスの登場や、仮想SIMサービスが拡充する前は、プリペイドSIMカードを購入して使う、あるいはモバイルWi-Fiルーターをレンタルする以外に、コスト面および利便性の面で実用的な海外での通信手段が無かった。
その後、スマートフォンが世界的に普及し「海外でもモバイルインターネットを使いたい。」というニーズが大きくなった結果、様々なデータ通信サービスが開発・提供され、「海外でデータ通信を利用する」ハードルが低くなったのは嬉しいなと。